gallery X 東京サテライト
東京展出品作家の有志6名で発足したグループ展です。
互いに切磋琢磨し、研究会的性格を持ちつつも、社会に強くアピールする運動体を目指しています。
第2回展で7名となり、第3回展においては 『東京宇宙主義』 宣言をして、より明確に方向性を打ち出しました。
私はこの会でより実験的な仕事をしています。
単なる平面にとどまらず、片側のみに額を付けたシリーズやインスタレーションなどを試み、
会場空間での見せ方や、他メンバーとの関係性などを追及しています。
第1回展
白い音シリーズの中でも “片側額シリーズ” として3点展示しました。
額縁の歴史は、人類の宗教観の歴史とリンクしていると考えられます。
すなわち何世紀も前は、西洋画においても東洋画においても、
絵の周囲は主に金の額縁や表装によって “神仏” が荘厳されていましたが、
時代を下るに従って額が簡素になり、やがて現代絵画においては、完全に取り払われてしまいました。
それは、人類の価値観が “人間中心” にシフトしてきたことを意味します。
私は、親鸞の “非僧非俗” の考え方に共鳴して、片側を神仏に対する敬意、もう一方を人間に対する肯定、
といった意味合いで表現しています。
ここで “聖なるもの” と “俗なるもの” とが等価に対置され、
私の根本的なテーマを具現化出来る可能性が示されます。
白い音 ―ladder―
2005年制作縦91cm×横116cm 帆布 アクリルガッシュ、クレヨン、オイルバー、金箔など |
白い音 ―音の符―
2006年制作縦143cm×横32cm 帆布 アクリルガッシュ、クレヨン、金箔など |
第2回展
ギャラリーくぼた別館の中2階というクセの強い空間で、
私は白い音シリーズで試みてきた様々な要素を分解して提示しようと考えました。
円の要素、正方形の要素、額という立体的要素、そして偶然性の要素などです。
解体することで、今まで複雑に見えていたものがよりシンプルに、分かりやすく見えて来ました。
また、メンバー全員が同じテーマで取り組む共通課題― 『紡ぐ』 において、
私は私以外6名の作家の作風をコラージュした上に、私の手法で全部を連結させる、という作品を発表しました。
第2回東京サテライト展
サイズ A4
案内状 |
白い音・インスタレーション
2008年制作奥 縦182cm×横182cm 手前パネル二枚91cm×91cm 帆布 アクリルガッシュ、クレヨン、オイルバー、金箔、発砲スチロールなど |
Satellite Light T
2007年制作縦45.5cm×横57.5cm 帆布 アクリルガッシュ、クレヨン、金箔など |
Satellite Light U
2007年制作縦54.5cm×横49.5cm 帆布 アクリルガッシュ、クレヨン、金箔など |
第3回展
命の根源として「初めに水ありき」から始まって、
次第に人間中心となってゆく様をストーリー的に描きたくてスタートさせた“水鏡シリーズ”。
まずは、〜神的側面と、〜人的側面を対比させました。
空間的には同じ空間を飾る作家が木を焼くことで黒く見せる今井伸治氏だったので、
彼の作品群の “黒” を私の〜人的側面の下部分に付いている黒い木材と関係させることで取り込み、
フロア全体を私のコンセプトで包み込む、という実験もしています。
3回展の共通テーマは『対話』でした。
楕円が二つ連なり、見ようによっては円柱にも見えます。
これは二つの形の対話であるとともに、東京展で『閉ざされた空間』を発表された薄井正彦先生との対話でもありました。
先生の絵では、完全に同形のひし形が二つ上下に配置され、全く平面的にも見え、或いは立方体にも見える、
という平面性と3次元的空間とのギャップを埋めた内容だったのです。
私は楕円と円柱に置き換えたわけです。
水鏡 ―人的側面―
2008年制作縦104.5cm×横159.8cm 帆布 アクリル・ガッシュ、岩絵の具、ステンレスパイプ、木 など |
光彩
2008年制作縦215cm×横46cm 帆布 アクリル・ガッシュ、クレヨン、オイルバー、アルミ箔 など |
第4回展
“水鏡” シリーズを発展させて、より人間の欲求が暴走するように画面内部の“水の部分”をはみ出させ、
なおかつ黒い額のような部分も押し広げています。
平面である絵の部分とステンレスパイプで連結された立体の部分とが反発、拮抗しています。
“星のシリーズ” も同時にスタートさせました。
木という“無意識的”素材が、綺麗な直線や円弧による曲線をもって“意識的”に裁断されているという性格の物質を用いて、
様々に組み合わせることにより、作品一個一個が思いもみなかったような表情を見せます。
それは未来の人間像でもあります。
『星』インスタレーション
2009−2010年制作縦182cm×横91cm のボードに10点の小品、 および床に3点 |
第4回展会場風景3
2010年制作左作品 水鏡 ―無明― U 縦182cm×横95.5cm 帆布 アクリル・ガッシュ、岩絵の具、金箔、木など 右作品 齋藤鐵心作品 |
MIZUDOKEI
2009年制作縦18.5cm×横13cm×奥行き13cm 木、アクリル・ガッシュ、アクリルキューブ |
星の器
2010年制作高さ4.7cm×横17cm×奥行き17cm 木、アクリル・ガッシュ、金箔 |
第5回展(ファイナル)
最終回となる展示を気分一新、市ヶ谷の山脇美術専門学校施設である山脇ギャラリーにて開催しました。
メンバーそれぞれがより大きな作品をゆったりと展示して、美術館のような飾りつけとなりました。
私は前回の作品の続編として『水鏡 W』と、今回の共通テーマである “展開” をイメージした 『TENKAI』、以上二点を出品しました。
私は前回の作品の続編として『水鏡 W』と、今回の共通テーマである “展開” をイメージした 『TENKAI』、以上二点を出品しました。
『水鏡 W』においては横6m超、高さも2.4mくらいある、壁面いっぱいのインスタレーション的
展示を行いました。しかし、あくまでも従来の絵と額との関係を問うているメッセージは変わりません。
中央パネルが絵の部分で、心理的な深さを意図しているのに対して、周りを囲む8枚のパネルは加速度的に
爆発するような “人間の欲望” “欲求” を表現しています。立体的な形で言えば球体です。
さらに一枚一枚に人間の異なった感情を込めました。喜び、怒り、悲しみ、楽しい、ウキウキ、などです。
『TENKAI』では、メンバー7名がさらに発展するように七面体の展開図を描きました。
私が感じる各メンバーのイメージカラーが施されています。また、それぞれの色面に白を足した色面が隣接していて、
それは新しいサテライトがメンバーを増やして行うことの暗示です。